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自律型ロボットは、
 定年退職の夢を見るのか        番外 Vol.09


 今から3千年以上の昔、「地球人の支配」下にあった第二帝国で、ナアシルカ社は人類史上初の自律型召使ロボットを販売しました。それ以来、様々なタイプのロボットが人類(ヴィラニ/ソロマニ人)によって用いられてきたようです。
 その詳細については「Book8:ロボット」や、「101ロボット」をご覧いただくとしましょう。

 今回の記事は、ソロマニ・リム宙域の調査会社「インペリアル・サーベイ」による、ロボット市場調査の続報です。




ロボットの大きさ(容積)調査

 再び、ロボット遭遇表を用いて、遭遇したロボットの大きさ(容積)の統計を取ってみました。その結果を、表1に示します。

        表1  遭遇するロボットの大きさ(遭遇表より)

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 最も遭遇頻度の高いロボットの大きさは、URP6の150リットルで30.6%
 2番目がURP5の100リットルで、遭遇率は19.4%でした。

 その一方で「101ロボット」に掲載されていたロボット(帝国内に限定)の大きさは、以下のようになっています。

       表2  遭遇するロボットの大きさ(101ロボットより)

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 「遭遇表」で決定されるロボットの大きさと、「101ロボット」に掲載されているロボットの大きさでは、その傾向が全く異なっていると分かるでしょう。

 「遭遇表」の場合、最も遭遇頻度の高いロボットは、その大きさが150リットルで30.6%、2番目が100リットルの19.4%ということになっていました。
 そして50リットル以下の小型ロボットは、遭遇率が2.8%しかありません。

 「101ロボット」の場合、最も遭遇頻度の高いロボットは、大きさが100リットルで26.7%。2番目が同率で2つあり、150リットルと50リットル以下の17.3%になっていました。

 また、750リットルのロボットは、「遭遇表」で5.6%が存在することになっていましたが、「101ロボット」では1例も見つかりません。その遭遇率は0%なのです。
 実用的ではないサイズなのでしょう。
 実際、私の設計経験でも750リットルは中途半端だと感じたことがあります。
 350リットルで容積が足りないことは滅多に有りませんでしたし、反対に大出力のパワープラントを積むならば、ロボットの大きさは1,000リットルを超えてしまいますから。

 ロボットの年齢(製造後の経過年数)を考察した際もそうでしたが、遭遇表は適当に作ってあるのだな、と思います。トラベラー世界の現実に即したものではありません。



 貶しているばかりでは面白くありませんから、私なりに「ロボットの大きさ決定表」を作り直してみました。

        表3  遭遇するロボットの大きさ(改訂版)

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 「101ロボット」の掲載データに合わせ、最も遭遇頻度の高いロボットの大きさをURP5の100リットルにしてあります。その遭遇頻度は30.6%。2番目がURP6の150リットル、遭遇頻度13.9%になりました。
 確率をさらに「101ロボット」の数字へ近付けたいのであれば、サイコロで5の目が出た時、半分の確率でURP5の100リットルに変更し、さらに7の目が出た時も、半分の確率でURP6の150リットルに変更すれば良いでしょう。
 そこまで拘る必要も無いと思いますが。

 URP3以下、50リットル以下の遭遇頻度が高いため、「遭遇表」では1つにまとめられていた容積を、「URP0〜1、10リットル以下」、「URP2、20リットル」、「URP3、50リットル」の3つに分割しています。遭遇率は3つまとめて16.7%

 URP8〜9、350〜500リットルの範囲のロボットは遭遇確率が低いため、1つの欄にまとめてしまいました。この欄に該当した場合は、それぞれ半分の確率でURP8の350リットルと、URP9の500リットルに割り振って下さい。

 URPAの750リットルは、遭遇表から取り除きました。実用的ではないサイズですから、まず、帝国内で遭遇することは無いでしょう。




ロボットの移動方式調査

 次は、遭遇表によってランダムに決定される、ロボットの移動方式を調べました。

          表4  ロボットの移動方式(遭遇表より)

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 1D6で決定されますから傾向も何も無いのですが、最も遭遇頻度の高いロボットの移動方式は2つあり、歩行と車輪です。
 確率はそれぞれで33.3%

 3番目と4番目も2つあり、キャタピラと反重力(エアクッション=ACを含む)。遭遇確率はそれぞれ16.7%でした。

 移動手段なしのロボットと、ゼロG移動パック、水中移動パックのみを用いるような特殊ロボットは、遭遇表では作れないようです。これらの特殊なロボットは、レフリーの裁量で、状況に合わせてデザインしなさいということなのでしょうか。




帝国内/帝国外ロボットの移動方式

 「101ロボット」に掲載されているロボット全てについて、その移動方式を調べ、分類しました。
 その調査結果が表5と表7です。

   表5  帝国内で利用されているロボットの移動方式(101ロボットより)

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 主部/従部などの組み合わせ、民間/軍用(武装型)、ヴァリエーション、模造品等で2つ以上のデータが掲載されている場合は、それらをまとめて1台のロボットとして数えました。

 僅差ですが、歩行式ロボットが最も多く25種類が存在しました。全体の33.8%を占めています。歩行式ロボットが帝国内で広く普及している事実を確認できました。
 ロボットの形状は生物型が多く、人間と同じ環境で仕事をさせる場合は、人間に近い形が便利なのだろうと推測されます。
 擬生物型ロボットのテルクとAB-101は、まだ実験段階のロボットですので、数に含めるか悩むところです。その2つを抜いた場合、反重力式と同じ23種になってしまいました。そうだとしても、まだ反重力式と同数で1位なのですが。

 2番目が反重力式ロボットで、25種、31.1%です。
 農耕ロボット(3種類)、建設ロボット(2種)、調査ロボット(4種類)などが目立ちました。
 農耕ロボットに反重力式の移動手段を利用することは、耕地で重量物を運搬したり、果樹の収穫を行なうことなどを考えれば、自ずと納得できるでしょう。農機具や肥料、収穫物などの重量物を空中に浮かべて運べるのであれば、まず耕地のあぜ道が不要になります(耕地の利用率が上がります)。また、耕地にトラクターなどを侵入させる必要が無くなりますから、作物の根を痛めずに済むようになりました(深耕の頻度が下がります)。農業に携わっていない方には分かり難い例えかも知れませんが、これらのメリットはとても有り難いことなのです。
 建設ロボットが反重力式を採用した場合は、「101ロボット」にも記載されている通り、リフトやクレーンといった作業機械が不要になります。このメリットによって、工程の単純化、工期の短縮、経費削減が可能になるでしょう。
 調査ロボットに反重力式が多い理由は、深く考えるまでもありません。どんな地形であっても踏破できる反重力式は、調査ロボットにとって大きなメリットです。
 撮影ロボットや天候制御ロボットなどは、移動手段が反重力式で無ければ、その能力を満足に発揮することもできないと思います。

 3番目が車輪式ロボットで、    9種12.2%。
 4番目が移動手段無しのロボットで、7種   9.5%。
 5番目がキャタピラ式ロボット、  6種   8.1%。
 6番目がエアクッション(AC)式、  1種   1.4%。

 車輪式とキャタピラ式を合わせても15種20.3%ですから、その利用率は歩行式や反重力式には比べて大きく劣ります。車輪式とキャタピラ式の移動方式には、ルールに現われない、何らかのデメリットが存在するようですね。

 また、反重力が実用化された社会において、エアクッション式は、あまりメリットが無いようでした。

         表6 遭遇するロボットの移動方式(改訂版)

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 101ロボットの遭遇率に合わせて、移動方式の表を作り直してみました。この表を用いれば、ほぼ現実通り(101ロボット掲載の移動方式)になると思います。

 参考のため、帝国外で利用されているロボットについても移動方式を調べてみました。その結果を表7に示します。

   表7 帝国内外で利用されているロボットの移動方式(101ロボットより)

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 帝国外のロボットも統計に含めた場合、歩行式ロボットと反重力式ロボットが、同率首位で33.7%でした。

 異種族のサンプルは最大でも4つしかありませんから、根拠としては弱いのですが、アスランは比較的、歩行式ロボット(2種で50%、93番の医療ロボットと、97番の擬生物型管理ロボット)を好むようです。
 残り2つは移動装置なしの机上管理ロボット(57番)と、反重力式の遠隔操作戦闘ロボット(85番)でした。

 ハイヴは歩行式と反重力式が半分ずつ(ブルーザーとベビーブルーザーは、2種類の異なるロボットとして数えています)でした。
 ハイヴも、歩行ロボットを好むようです。

 ククリーは車輪式とキャタピラ式ロボットの混成した主部/従部ユニットが存在することから、それぞれを「0.5」と数えてみました。
 歩行式が1種50%、車輪式とキャタピラ式が25%ずつになります。
 彼らの生活環境に階段は存在しない筈ですが、それでも歩行式の方にメリットがあるということでしょうか。

 意外なことに、ゾダーン連盟は反重力式のロボットしか利用していません。
 彼らの社会は汎用の人間型ロボットを必要としないようですから、それでも構わないのでしょうか。

 以上のように、帝国外のロボットを見ても歩行式のロボットは優勢です。反重力式と同じ数が利用されているのですから、それは間違いありません。
 それでは、歩行式ロボットのメリットとは、一体、何なのでしょう。




歩行式ロボットのメリット

 「101ロボット」など公式設定で「歩行式ロボットが重用されている」からには、「何らかのメリットがある」に違いない。
 ならば、そのメリットとは何だろうか、ということを考察しました。

 トラベラー宇宙(57世紀の未来世界)において、20世紀テラで語られていたような歩行式ロボットの欠点は、その大部分がすでに解決されています。
 ちょっと調べてみましたが、ロボットの実現性について語る時、概ね、以下のような問題が提示されるようでした。

 歩行式ロボットは高価であり、信頼性に劣る。また、ロボットを実現できる科学技術が存在するならば、その技術を利用した自動車や航空機はもっと高性能になっており、歩行式ロボットの出番は無い。

 ということだそうです。
 20世紀テラならば「その通り」でしょうから、私も全面的に同意しますが、ここで語っているのは「トラベラー宇宙」におけるロボットの実現性です。トラベラーのルールに則って、評価しなければならないでしょう。
 主な3つの問題について、1つずつ検討してみました。


●歩行式ロボットは、高価である。

  ⇒ ロボット作成ルールに基づいて歩行式のロボットを車輪式やキャタピラ式で
    再設計してみましたが、ラシュシュ第1号の製造コストはCr855しか安く
    なりませんでした。
    コスト全体のわずか0.3%ですから、歩行式ロボットが高価とは言えません。


●歩行式ロボットは、信頼性に劣る。

  ⇒ CTとMTの双方において、歩行式故に故障率が高い、事故率が高い
    といったルールは存在しません。
    故障率や事故率は、車輪/キャタピラ式、反重力式と同等でした。
    トラベラー宇宙の歩行システムは他の移動方式と同様に信頼性が高く、
    「歩行式ロボットが信頼性に劣る」ということは、有り得ないのです。


●ロボットを実現できる科学技術が存在するならば、
 その技術を利用した自動車や航空機はもっと高性能になっている筈だ。

  ⇒ CTでロボットと宇宙船以外の輸送機器は作れませんが、
    MTの輸送機器作成ルールならば、色々な輸送機器を作れます。
    そしてMTのルールは、ロボットの作成ルールとほぼ同じ数値でした。
    ですから、トラベラー世界の輸送機器は、
    ロボットの製造技術と同様の物を用いているのです。
    ロボットだけが特に優れている訳ではありません。


 コスト、信頼性の問題がクリアされている訳ですから、人間サイズ、人間型の歩行式ロボットが重用されることは明らかだと思います。「人間と同じように」段差を乗り越えることが出来る、階段を上り下りできる、重心の移動に合わせて接地面を動かせる、などのメリットはとても大きいのですから。
 橘様からは、歩行式ロボットのメリットとして「飛び降りることが出来るのは、歩行式ロボットだけだ」という御指摘を頂きました。これについては、「跳び上がり」や「飛び越え」などと共に、次回の原稿で考察する予定です。
 逆に考えるならば、人間型をしていない「歩行式ロボット」のメリットは、ほとんど無いのかも知れませんね。

 歩行式人間型ロボットのメリット例を、下図7
で示します。
 あくまで一例ですので他にもたくさんメリットがあると思いますが、歩行式の場合、足の屈伸によって身体を上下に動かすことが出来るというメリットがありました。そのため、身体をまっすぐ伸ばせば高所の物を取ることが出来ますし、足を曲げれば床上の物を取ることもできます。この辺は、(例えば、バリアフリー住宅を扱った)建築の本を見て頂いた方が分かりやすいでしょう。


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    図7  歩行式/車輪式/キャタピラ式ロボットの作業可能範囲(高さ)

 歩行式ロボットのサンプルはラシュシュ第1号ロボット(101ロボットNo.32)、車輪式ロボットのサンプルには専門シェフロボット(同No.56)、キャタピラ式ロボットのサンプルには貨物操作ロボット、インテクトDB1-B(同No.04)を用いました。




ラシュシュ第1号ロボット

 「101ロボット」に掲載されている補助ロボットのひとつが、32番のラシュシュ第1号ロボットです。TL12の技術で作られたロボットでしたが、低自律型の基礎プログラムと上級命令の基礎命令プログラムを備えていました。その知力は5、教育度は6(シナプスによって10まで上昇)という優れものです。
 ロボット操作技能を持たない者でも扱うことが出来るというセールストークにより、急速に利用が広まっていったとのことですが。

 それはともかく、ラシュシュ第1号ロボットは、容積150リットル、重量210kg、製造コストはcr297,000というデータでした。私が松永様のExcelシートを利用して再設計したところ、ほぼ同じような数値が出てきましたので、計算間違いなどの問題は無いようです。

 ところで、CTのロボット作成ルールには、設置式の移動手段(歩行/車輪/キャタピラ式)を採用した場合、パワープラント出力の半分を移動に振り向けなければならないという理不尽なルールがありました。このルールが無ければ、パワープラント出力を半減できますし、胴体容積も半分にできます。
 その制限を無くして試しに作ってみたところ、容積88リットル、重量109kgと大幅な軽量化を実現できました。残念ながら、製造費はそれほど変わりません。余りにも、頭脳部のコストが大きいのです。個人的には「軽量化」を大きく評価したいところですが、基本に戻りましょう。

 このラシュシュ第1号(オリジナル版)を使い、召使ロボットの経済性を考えてみることにしました。




歩行式と反重力は、どちらが経済的か

 私が抱えている悩みのひとつが上記の問題です。歩行式と車輪/キャタピラ式などの接地移動方式では、歩行式に色々なメリットがあるようなのですが、はたして

「ロボットは、歩行式反重力式のどちらが経済的なのでしょうか」

 ラシュシュ(オリジナル版)の移動手段を歩行(2本の足)から反重力式に切り換えて、製造コストを比べてみることにしました。その際の推力は自重210kgということですから、筋力48の3倍=144kgの荷物を持ち運べるという想定で、400kgにしてみます。
 反重力ユニットには、超重作業用(D)、重作業用(E)、軽作業用(F)の3種類が存在しました。それぞれについて設計し、製造コストなどを比較します。


1.超重作業用反重力(D)
 1ユニットの発生する推力が1,000kgということですから、1,000kg未満の単位では搭載できない筈ですが、松永様のExcelシートでは選べることになっていました。これは重要な変更点だと思いますが、私はCTオリジナル準拠で比較することにします。推力1,000kg分のユニット1つを搭載しました。

 推力1,000kgを得るために必要な電力は100kw。ラシュシュに積まれていた「3型の燃料電池」では、必要な電力を賄いきれません。仕方が無いので「5型の燃料電池×2個」に積み替えます。
 大量の燃料電池を積むため胴体サイズがひと回り大きくなり、それでも燃料は5時間分しか積めなくなりました。重量は380kgまで増加。144kgの荷物を運ぶために必要な最低限の推力は、580kgに増えました。推力1,000kgは、無駄ではなかったようです。
 ちなみに、製造コストはCr303,200でした。Cr4,200(1.4%)のコスト増です。あまり不経済という訳ではありませんが、召使ロボットとして大型化は好ましくないことでしょう。現実に用いる場合、通路幅の拡大やドアの拡張、狭い場所での作業に使えないなどの問題が生じてしまいます。


2.重作業用反重力(E)
 この反重力ユニットを利用する場合、1ユニットの発生する推力が400kgですからちょうど良い推力だと言えます。

 推力400kgを得るために必要な電力は12kw。歩行(2本の足)に振り向けられていた電力が20kwですから、十分に余裕がありました。それどころか、燃料電池のサイズをひとつ下げて「2型の燃料電池」でも十分なくらいでしょう。
 燃料電池の小型化と歩行サスペンションを省いたことによって、大幅な軽量化を実現できました。重量210kgが、なんと140kgです。
 これだけならば非常に喜ばしいのですが、製造コストはcr307,100。Cr8,100(2.7%)のコスト増です。


3.軽作業用反重力(F)
 この反重力ユニットは、1ユニットで100kgの推力を発生できます。必要な推力が400kgですから、4ユニットを搭載することになりました。

 推力400kgを得るために必要な電力は4kw。余剰電力が20kwですから、燃料電池のサイズをひとつ下げて「2型の燃料電池」でも十分です。試しに2ランク下の「1型の燃料電池」にも変えてみましたが、これはちょっと無理でした。
 軽量化によって、重量は141kg。しかし、上記(重作業用反重力)の数値とあまり変わりません。
 肝腎な製造コストはcr417,100。Cr118,100(39.5%)のコスト増です。とても不経済だと判明しました。これだけ高価になったのに、小型化や性能向上の点では、重作業用反重力(E)と大して変わらないのです。


 TL12のラシュシュ第1号ロボットだけではサンプルが少ないかと思い、TL14の秘書ロボットについても、反重力化の結果を比較評価しています。それら設計変更の結果を、以下の表8
、表9にまとめました。
 赤字は、設計変更によって性能が悪化したこと(重量、容積の増加、価格の上昇を招いてしまったこと)を示しています。

 表9 「ラシュシュ第1号(TL=12、101ロボット32番)」の製造コスト比較

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 表10 「秘書ロボット第1号(TL=14、101ロボット27番)」の製造コスト比較

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 上下に並んでいる2つの歩行式は、上側がオリジナル準拠の数値。
 下側が「パワープラント動力の半分を移動装置に回す」ルールを無視した設計の数値です。御覧の通り、ロボットの重量と容積は大きく減少していますが、コスト軽減の役には立っておりません。

 表8、表9を見れば一目瞭然ですが、移動方式を反重力に切り換えることで、製造コストは最低でも1.4%、最大で39.5%の増加を招きました。
 つまり、反重力移動式ロボットは、高価だということです。
 何らかの理由で「飛行性能」を要求されない限り、ロボットは歩行式(または車輪式/キャタピラ式)で設計されることになるでしょう。

 また、超重量作業用の反重力ユニット(URPコード=D)を搭載したロボットは、必要な電力を賄うため、大型の燃料電池を搭載しなければならず、必然的に胴体容積も大きくなると判明しました。
 ラシュシュ第1号ロボットの場合も、秘書ロボットの場合も、胴体容積は倍増です。

 重作業用反重力(URP=E)と軽作業用反重力(URP=F)の間で、性能に大きな違いはありませんでした。しかし製造コストには顕著な差が生じます。軽作業用の反重力ユニットは極めて高価な部品ですので、軽量化最優先の設計を行なうのでない限り、ロボットに軽作業用の反重力ユニットを用いるべきではないでしょう。




召使/秘書ロボットの経済性

 移動方式に歩行式を選んだロボットが最も経済的であると確認できましたから、次にロボットの基本的な経費/維持費について考えます。

 最も大きな経費は、購入費でしょう。宇宙船の場合とほとんど同じ形でコスト計算をしてみました。ロボットの場合は、テックレベルによってローン返済の期間が変わってきますから、それに合わせて返済額を変えなければなりません。

 テックレベル15の場合は返済期間が最長40年です。宇宙船のローンと同じ利率を用いて、年間返済額が購入費の6.25%になりました(頭金なしで計算)。
 テックレベル14の秘書ロボットの場合は35年で6.515%。
 テックレベル13の場合は27年ローンで7.212%。
 テックレベル12のラシュシュ第1号ロボットの場合は20年で8.383%となります。

 ラシュシュ第1号 製造コスト  Cr297,000
          ローン支払い Cr   24,898/年
          整備費    Cr      2,970/年
          燃料代    Cr          219/年
          合計     Cr   28,087/年

 秘書ロボット   製造コスト  Cr189,700
          ローン支払い Cr  
13,682/年
          整備費    Cr      1,897/年
          燃料代    Cr          131/年
          合計     Cr 15,710/年

 上記の合計で、毎年Cr28,087〜15,710の経費が必要になると分かりました。
 ローン返済が終わってしまえば(ラシュシュの場合で20年、秘書ロボットで35年が過ぎれば)、整備代と燃料代だけですから、毎年Cr3,189〜2,028の経費しか掛からなくなります。



 一方、ロボットの代わりに人間を雇った場合はどうでしょう。

 召使やメイドの給料は分かりませんでしたが、いい加減な調査の結果、20世紀テラ極東島国における家政婦の時給相場は、Cr15〜20だそうです。
 毎日8時間×365日の雇用で、年間Cr43,800〜58,400。

 24時間営業のレストランやコンビニエンスストアで、アルバイト店員(時給Cr8)を雇っているならば、時給Cr8×24時間×365日=Cr70,080。

 ちょっとした会社で秘書を雇うと、月々の給料がCr2,000〜2,500。
 その他の経費(年金、保険、交通費の支給など)で50%増しと考え、1年分の出費を求めると、Cr36,000〜45,000になりました。

 24時間の連続勤務が可能ですとか、休みが要らないなどのメリットを度外視したとしても、明らかにロボットを使う方が経済的だと分かりました。
 雇用者は少しでも安い労働力を使おうとするものですから、このままでは、人間の労働者の大半が失業してしまうでしょう。どうやらトラベラー宇宙では、人間の労働者を保護するために、様々な法律が存在しなければならないようです。




新たな技能を与える場合のコスト

 教育についての経済性はどうでしょうか。

 雇用者が現在よりも技能の高い労働者を必要とした場合、<徴用>ロールに成功して、求める技能者をすぐに雇えれば良いのですが、大抵の場合、そう簡単にはいきません。
 手元に居る労働者に教育を施して技能レベルの向上を目指すか、全く未経験の新人を雇って、彼/彼女を訓練する必要があるでしょう。

 この場合のコストは、MTの訓練ルールによると、難易度<並>で持久力の成功判定を行わなければなりません。標準的なキャラクターは+2〜3のDMを持っている筈なので、その成功率は83〜92%とします。
 訓練に要する時間は、60〜360時間(平均200時間)。週40時間の集中訓練で5〜6週間、毎日1時間の訓練ならば半年間が必要になりました。
 コストについては、訓練1時間当たりcr10という目安が与えられています。平均が200時間だとするならば、cr2,000になるでしょう。

 <車輪型輸送機器>の運転技能や<スチュワード>技能はともかく、<医学>技能や<パイロット>技能がこの程度の出費で習得できるのは納得いきません。
 20世紀テラ、極東島国での訓練費用について調べてみた所、<車輪型輸送機器−1>の技能を修得するだけでも、最短で2週間(60時間)とCr2,000が掛かっていました(合宿免許を参考にしました)。はたして、免許を取得しただけで<技能レベル−1
>を得ているのかどうか、怪しいと思いますが。
 <医学−1>を習得するためには、看護学校で3年間を費やす必要があり、学校へ収める費用だけでもCr13,500(公立)〜33,000(私立)が掛かりました。勝手ながら、私の独断で<医学−1>の技能を看護婦資格相当とみなしています。こちらは確実に<技能レベル−1>を得ていると思いますが、3年分の生活費を支給するならば、さらに費用が掛かるでしょう。

 訓練を終えた後にも技能習得の成功判定が必要です。難易度<難>で、関連技能と教官技能によるDMを受けられますが、+2のDMが精々だと考えれば、成功率は28%。持続判定と合わせると、4分の1程度の成功率しかありません。失敗しても再度の技能習得は行なえますが、費やされる時間と経費は同じだけ必要になります。
 単純に考えると、技能習得の経費は4倍になるでしょう。

 2つの成功判定に成功したとしても、最短で2週間(1ヵ月半)の時間を要し、最低でもcr600の出費が必要になる訳です。集中訓練でも平均5〜6週間の時間が必要になる訳ですから、その間の人件費(訓練を受けている本人+教官の給料)だけでも大変な額になります。訓練を受けている本人の給料を「研修中だから」と言って抑えたとしても、最低賃金の時給Cr6は必要だと思いました。
 色々と疑問を感じるところはありますが、MTのルールで教育(技能レベル−1を得るため)に必要な経費を計算すると、以下のようになります。

 時給Cr6×200時間+教材費Cr10×200時間=Cr3,200。

 20世紀テラの極東島国の通貨に換算して、30万円前後の経費が必要になるのです。結構な大金だと思いませんか。
 技能習得の成功率が4分の1であることを考慮に入れれば、必要経費は上記の4倍、Cr12,800に金額に膨れ上がります。
 まとめて数人の労働者に訓練を施せば、教官の給料だけは人数割り出来ますが、個人当たりに必要な上記の金額は、決して安くなりません。教育とは、とてもお金の掛かることなのです。


 ところがロボットの場合、新たな<応用プログラム>を必要分だけ買ってきて、インストールすれば、それだけでOKです。訓練も慣らし運転も必要ありません。プログラムを組み込んだ瞬間から、その技能を発揮できると考えられます。
 そのための出費は、概ねCr200〜400の範囲で足りるでしょう。技能レベル1当たりcr1,200という高コスト技能も存在しますが、それでもまだCr3,200という大金に比べれば、十分に安価なのです。

 ロボットの最大技能数(知力+教育度)を超えてしまうため、新たな技能を修得できないならば、標準型の記憶ユニットを10個買ってきて(Cr250×10=2,500)、記憶容量(=教育度)を増設しましょう。パソコンに増設メモリを取り付けたり、外付けハードディスクを増設するようなものだと思います。
 最大技能数(知力+教育度)の上限は人間にもありますから、彼らの教育度を向上させることと比較すれば、簡単でしょう。
 教育に関しても、やはり、ロボットの方が経済的だと判明しました。



2009.10.11 初投稿